アニメ業界の抱える問題について。

業界関係者の知人より詳しい話を聞いてみました。(元某有名プロダクションの会社役員という経歴を持つ人です。)
先日、発足したJAniCA日本アニメーター・演出協会ですが、
いままでにも同様な団体は、アニメ事業者協会(アニメーション事業者協会)があったそうですが、こちらについては
名前の通り、事業者の集まりとして、比較的小規模なプロダクションが集まって出来たものという事です。
30社程が加盟していますが、手塚プロ東映アニメーション等の、主に作品に関する版権を持っている
大手といわれる所は加盟していないそうです。
というのも、先日もブログに書いたように下請けの元請に対する条件改善などを主な目的としているらしい。
ただ、結局のところ、やはり先日書いたような状態で、業界内で、仕事の取り合いをしているだけで、
具体的な効果はあまり出ていないようです。


それに対して、今回のJAniCAは、現在は、基本的に元請プロダクションだけに支払われている、
アニメーターや、下請けプロには一切支払われていない、
広告代理店・放送事業者等から払われる著作権料、著作権二次使用料(再放送・DVD化等の際に支払われる)
などの再分配を目的としている点が違うようです。


つまり、元請(大手)プロダクションだけが、著作権料や、2次使用料という名目での報酬を受け取っておきながら
下請けプロダクションへは、労働力の「買い取り」とい感じで、
実際に絵(動画・原画)を描いているアニメーターや、演出、つまり映画監督みたいな作業を行っている人たちには、
本来支払われるべき著作権や、再放送の際には一切報酬を受け取っていないという事が最大の問題のようです。


ですので、それまでは下請けをしていたプロダクションが、新規に、元請になろうと
新番組の企画を局に売り込みに行っても、局と既存の大手プロダクションとの関係などがあり、
全く相手にして貰えない事情も業界には、あるようです。


参考までに、(放送)局発注で制作されるアニメは、放送局が制作費を支払っているようですが、
放送局側の人間(プロデューサー?)は、十分・正当なな制作費用を支払っているという認識を持っているようです。
それが本当に妥当な金額かは分かりませんが、数十年全く変わってないのも事実だそうです。


更に余談、ここからは私の推測ですが、上記のような形で放送局側から制作費が支払われる場合以外に、
アニメ原作の権利を持っている出版社等が主体となって、投資組合を作り、制作費を出している方式があるのは
ご存知の方が多いと思いますが、そちらについてはOPやEDクレジットに、○○制作委員会や、
アニメの内容にちなんだ名称(学園物なら、△△生徒会等)
それに対して、局発注の場合は、OPやED最後に放送局名が出てくる事で判断が出来ると思います。


私も何故、わざわざ深夜枠で放送しているアニメがあるのか、最初は分からなかったのですが、
どうも「大人の事情」というのは、ここらへんを差してるのではないでしょうか。(ゴールデン枠で放送しない・出来ない)
実際注意して見てみましたが、日中放送しているアニメは、放送局名+元請大手プロ、
深夜枠は、出資組合名がクレジットされてる場合が殆どのようです。


お金の流れも上記とは違ってくる訳で、この場合については、以前、業界関係者(制作進行)から聞いた限り
制作費としては、上記から比べると若干高く支払われている感じがしますが、
やはり、この場合でも、投資組合に出資している企業、プロダクションに対しては、支払われるであろう
著作権料、二次使用料、関連グッズやDVD等の売り上げのロイヤリティという形での報酬は、
下請けプロダクションが、会社として出資していれば別ですが、(出資の資金的に割合は低そうですが)
そうでない限りは、下請けプロ、アニメーターや演出の人に再分配されていない点は同じなのでしょう。


一番単純な解決策としては、形式的にでもアニメーターや、演出等の人たちが、一般の企業で言うところの
ストックオプションみたいな形で、出資した形式を取り、利益(著作権料・ロイヤリティ)を分配する、
当然、会社と著作権を持つ個人の出資割合を一定以上に決める為の、業界ルールを作る事が条件となりますが、


東京都でも、練馬区、杉並区、武蔵野市等は、アニメの町をうたっているのであれば
中途半端な振興イベントをするよりは、こういった個人、弱小プロダクションへ
出資・低利での貸付をしたほうが、よっぽどアニメ振興になるのではないかと思います。