電子出版に求められる電子端末の性能

iphone4の発売が迫っていますが、先立って発売されたiPad等、手持ちのXperiaを含め、
日本国内における電子出版の媒体としては十分なものなのでしょうか?
・・・という事を以前にもブログで書きましたが、もう少し厳密に調べてみました。
紙媒体による印刷、この分野って、専門的な事が多いので、なかなか面倒です。
言葉としては知っていたのですけど、スクリーン線数(lpi)、ピクセル密度(ppi)
パソコン用プリンタやスキャナでも一部使われる、解像度(dpi)等の言葉があります。
同じdpiでもメディアによって意味合いが違ったりするので、なかなか単純に比較するのは
難しいところではあるのですが、ざっくりと調べてみました。
まず、印刷物で必要な解像度(スクリーン線数)ですが、wikiペディアによると、

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3%E7%B7%9A%E6%95%B0
新聞 - 60〜80 lpi
文字が主体の雑誌・書籍 - 80〜133 lpi
カタログ、写真雑誌、チラシなど - 175 lpi 前後
※写真や絵画などの印刷物では、300lpi以上で印刷する場合もある(高精細印刷)。

lpiという単位ですが、これは一定の長さの間で、何本の線を引いて見分けられるか
という意味を持ってます。テレビの解像度を表す単位(TV本)の表現にも似ていますね。
つまり1インチ2.54cmあたりA3サイズの新聞では80本の線を引いた物が見分ける事が可能で、
これが物理的なサイズの小さい書籍等では、もっと高いスクリーン線数が必要という事になります。


これに対し、最新の電子端末の解像度は、どの程度なのでしょうか、こちらにまとめて書かれてましたので
紹介しておきます。
http://ameblo.jp/n-value-consulting/entry-10560273913.html
こちらのデータによると、やはりiPadの解像度は、むしろ現在話題の物の中では一番低く132dpiですが
既に皆さんご存知のように絶対的なピクセル数はサイズが大きい(9.7インチ)のでXGA(1024x768)有ります。
これに対し、最大の機種ではiphone4で326dpiあります。とは言っても最新の国内の携帯では
やはり3.2〜3.5インチ程度の大きさで、同程度の解像度がありますので、
特に驚くような技術ではありません。世界的に見れば珍しいのでしょうが・・・。


スクリーン線数と解像度(dpiやppi)は、単純には比較が出来ないと何処のサイトを見ても
記載されています。これは、斜めに線を引いた場合の事などがあるからと思います。
何処かに、もっと詳しく説明してあるサイトや書籍もあるのだとは思いますが、今ネット上で
探しても見付けられませんでした、今回は単純に垂直や、水平方向だけと仮定して比較してみます。
斜め方向の要素がある場合、もっと高い性能(数値)となる事は用意に想像出来る事と思います。


それを前提で考えてみますと、スクリーン線密度が150本であるとすると、dpi(ppi)で表そうとすると
単純計算で最低2倍の数値という事になります。つまり最低300dpi(300ppi)という解像度が
必要という事になります。言うまでも無く、これは1インチの長さの間に幾つのドット・画素が
並んでいるかという意味です。
これは上記でも書きましたように最新の国産携帯や、iphone4等では達成している数値です、
但し、ここで問題なのは物理的な大きさです。iphone4で言うと3.5インチしかありません。
手軽に持ち歩き可能なサイズの書籍で言うと新書や大きくてもB5やA5程度見開きという事になります。
つまりiphone4を数十個並べる必要がある訳です。
やはり到底、iPadのサイズとしても、漢字や、マンガ等を不満なく見れるようにするには
圧倒的に性能不足という事が、お分かり頂けると思います。


話を少し戻します。数値で言っても、頭の中でイメージするのは難しいと思います。
一番簡単なのは、皆さんお持ちのA4スキャナで、普段読んでいる種類の本を取り込んで、
パソコン画面上に表示して頂ければ、読み取り可能な状態で、どれだけの範囲が一度に表示できるかで
簡単にイメージが出来ると思います。私も過去に何度もやってみましたが、例えばB5変形サイズの
4コママンガや、A4サイズの技術書を読み込んで表示して全体を一度に見れる解像度というと、
最低でも1600x1200の21インチや、21.5インチの1920x1024(フルHD)ディプレイ程度は必要なように
思いました。私が先日、国内ではiPadでの電子出版が成功しないと書いたのは、その試行があったからです。
但し、私が普段見ない、小説や、週刊誌の類等の書籍・出版物では、どうかはまだ調べていません。
もしかしたら、もっと低い解像度でも、それ程苦無く常用出来てしまうかもしれません。
その点については未知数ではありますので、電子出版全体としての利用頻度からすれば、
もしかしたら、iPadで商業ベース的に絶対的に必要な最低限の数量は確保できる可能性はありますが、
iPadの登場だけで紙媒体の印刷物が、直ぐ完全に消えるかと言ったら、
そういう可能性は、皆無である事は断言出来ると思います。


但し、紙媒体には無い利便性がある事も、また事実です。
将来的には、そういった可能性は十二分に有るとは思いますが、それはまだ最低でも
数年は先の話だと思います。出版業界が慌てる必要は無いように思えますが。